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相続した空き家の売却で知っておきたい流れと税金の特例
カテゴリ:不動産お役立ちコラム  / 投稿日付:2026/09/25 15:46

相続した空き家の売却で知っておきたい流れと税金の特例
実家を相続したものの、誰も住む予定がなく空き家のままになっている。そんな状況で「そろそろ売却を考えたほうがよいのだろうか」と迷われる方は少なくありません。空き家は持ち続けるだけで維持費や管理の手間がかかり、傷みが進むほど売却の条件も難しくなっていきます。一方で、相続した空き家の売却には期限のある税制上の特例があり、売り方やタイミング次第で手元に残る金額が大きく変わることもあります。この記事では、相続した空き家を売却するまでの流れや売り方の選択肢、知っておきたい特例や注意点についてわかりやすく整理していきます。

相続した空き家を売却する前に押さえておきたい現状
相続した空き家を売却する前に押さえておきたい現状

相続した空き家は、住む予定がないまま時間が過ぎてしまいやすい財産です。まずは、持ち続けた場合に何が起こるのかを整理しておくと、売却という選択肢を落ち着いて検討しやすくなります。

空き家は所有しているだけで負担が続く

空き家であっても、固定資産税や都市計画税は毎年かかります。さらに、火災保険料や電気・水道の基本料金、庭木や雑草の手入れ、定期的な通風や点検といった管理の手間も必要です。遠方に住んでいる場合は、管理を業者に委託する費用や、現地に足を運ぶ交通費も加わります。


建物は人が住まなくなると傷みが早く進むといわれます。屋根や外壁の劣化、雨漏り、シロアリの被害などが進行すると、買い手にとっての魅力が下がり、結果として売却価格にも影響します。「いつか考えよう」と先延ばしにするほど、選べる手段が狭まっていく点は意識しておきたいところです。

管理が行き届かないと税の軽減が外れることもある

2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法では、これまでの「特定空家」に加えて「管理不全空家」という区分が設けられました。そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態の空き家が対象で、自治体からの指導や勧告の対象になります。


勧告を受けると、住宅が建つ土地に適用されている固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増える可能性があります。維持費を抑えるつもりで放置していたのに、かえって負担が重くなるという事態も起こり得るため、早い段階で方針を決めておくことが大切です。

相続した空き家を売却するまでの流れ
相続した空き家を売却するまでの流れ

空き家の売却は、通常の不動産売却の前に相続の手続きが必要になります。全体像を把握しておくと、どこに時間がかかるのかが見えてきます。

名義を相続人に変えるまでの手続き

大まかな流れは次の通りです。


・遺言書の有無を確認する
・相続人と相続財産(不動産・預貯金・負債など)を確定させる
・遺産分割協議を行い、誰が空き家を引き継ぐかを決める
・相続登記を申請し、名義を相続人に変更する
・不動産会社に査定を依頼し、媒介契約を結ぶ
・売却活動から契約・引き渡しへ進む


不動産は名義が被相続人のままでは売却できません。売却を前提にするのであれば、遺産分割協議と相続登記を早めに済ませておくことが、その後の動きをスムーズにします。

相続登記は2024年4月から義務化されている

2024年4月1日から相続登記は義務となり、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請することが求められています。正当な理由なく手続きを怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。施行前に発生した相続も対象で、こちらには猶予期間が設けられています。


遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、相続人であることを法務局に申し出る「相続人申告登記」という簡易な手続きも用意されています。ただしこれは義務を果たすための手続きであり、売却するには最終的に正式な相続登記が必要です。


相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書、固定資産評価証明書などが必要になります。書類の収集には時間がかかることも多いため、早めの着手をおすすめします。

相続した空き家の売り方は大きく3つ
相続した空き家の売り方は大きく3つ

同じ空き家でも、どのような形で売るかによって費用も進め方も変わります。そしてもう一つ大切なのが、のちほど解説する「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」を使えるかどうかが、この売り方によって変わるという点です。それぞれの特徴とあわせて確認していきましょう。

現況のまま売る

建物を残したまま「古家付き土地」として売る方法です。解体費用がかからず、そのままの状態で売り出せるため、手元の持ち出しを抑えやすいのが利点です。リフォームして住みたい方や、自分で建て替えを考えている方が買主となるケースもあります。


ただし、税金の面では注意が必要です。建物を残したまま売る場合、3,000万円特別控除を使うには、その建物が耐震基準に適合していることが条件になります。相続した古い家がそのまま基準を満たしているケースは多くないため、現況のまま売ると控除が使えないことが少なくありません。解体費用はかからない一方で、税負担が大きくなる可能性がある点は押さえておきましょう。

解体して更地にしてから売る

建物の傷みが激しい場合や、土地としての魅力を打ち出したい場合には、解体して更地で売る方法があります。買主が土地の使い方をイメージしやすくなる一方で、解体費用の負担が先に発生します。自治体によっては解体費用の補助制度が設けられていることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。詳しくは空き家の解体で使える補助金について解説した記事もあわせてご覧ください。


税金の面では、3,000万円特別控除を使ううえでもっとも確実な方法です。解体費用は先に必要になりますが、その分を売買価格に反映させて売り出すという考え方もできます。


なお、建物を解体して更地にすると、その土地に適用されていた住宅用地特例が外れ、翌年からの固定資産税が上がる点には注意が必要です。解体の時期と売却の時期をどう組み合わせるかは、あらかじめ相談しておきたいポイントです。

不動産会社の買取を利用する

不動産会社が直接買い取る方法です。買主を探す期間が不要なため、引き渡しまでの期間が読みやすく、家財が残ったままでも相談できるケースがあります。売却価格は仲介による売却よりも抑えられる傾向がありますが、早く手放したい、遠方で管理が難しいといった事情がある場合には現実的な選択肢となります。


こちらも、建物を残したまま引き渡すと3,000万円特別控除が使えないことがあります。控除の活用を考えるのであれば、引き渡し前に解体しておくか、買取業者に解体してもらうことを売買契約の条件として明記しておく必要があります。買取を依頼する段階で、控除を使いたい旨をあわせて伝えておくと話が進めやすくなります。


どの方法が合うかは、建物の状態や立地、相続人の希望する時期によって変わります。まずは現況のまま査定を受け、そのうえで解体や買取と比較してみるとよいでしょう。税制上の特例まで含めて考えると、更地にして売る形が有力な選択肢になります。

相続した空き家の売却で使える税金の特例
相続した空き家の売却で使える税金の特例

空き家を売って利益(譲渡所得)が出た場合には、所得税と住民税がかかります。相続した空き家には、その負担を軽くする特例が用意されています。

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除

相続した空き家を売って利益が出たとき、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡とされています。ただし「相続した空き家を売れば必ず使える」というものではなく、建物の条件と売り方の両方が要件を満たしている必要があります。まず、前提となるのは次の条件です。


・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続開始の直前に被相続人が住んでおり、ほかに居住していた人がいないこと
・売却代金が1億円以下であること
・相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
・譲渡時に耐震基準を満たしているか、家屋を取り壊していること


このうち建築時期は特に重要で、昭和56年6月1日以後に建てられた家屋は、解体して更地にしたとしても対象になりません。まずは登記事項証明書などで建築年を確認しておきましょう。


そのうえで、控除が使えるのは次の3つの売り方です。


・パターン1:売主が建物を解体し、更地にしてから売る
・パターン2:建物付きで売り、買主が譲渡した年の翌年2月15日までに解体する
・パターン3:建物付きのまま売る(耐震基準に適合している場合のみ)


もっとも確実なのはパターン1です。引き渡し後の状況に左右されず、要件を満たしているかどうかが明確になります。解体費用は先に必要になりますが、その分を売買価格に反映させて売り出すという考え方もできます。


パターン2は、2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡から認められるようになった方法です。買主が翌年2月15日までに解体することが条件になるため、売買契約書にその旨を明記しておく必要があります。ただし、買主が予定どおり解体しなかった場合には控除が使えなくなり、トラブルにつながるおそれもあります。解体費用を用意できるのであれば、パターン1のほうが安心です。


パターン3は建物を残したまま売れる方法ですが、昭和56年5月31日以前の古い建物が耐震基準に適合していることが前提になります。相続した空き家にあらためて耐震改修の費用をかける方は多くないため、実際に当てはまるのは、被相続人が生前に耐震補強を行っていた場合などに限られます。帰省の折やご家族が集まる機会に、過去の改修履歴を確認しておくと判断がしやすくなります。


具体例で見ると、次のようになります。


・例1:平成5年築の建物付き土地をそのまま売却 → 使えない
 建物が昭和56年5月31日以前の建築ではないため、そもそも対象外です。解体して更地にしても控除は使えません。
・例2:昭和55年築(耐震基準に適合していない)の建物付き土地をそのまま売却 → 使えない
 耐震改修を行うか、解体して更地にする、あるいは買主に解体してもらう必要があります。
・例3:昭和55年築の建物を解体し、更地にしてから売却 → 使える
 建築時期の条件を満たしており、売り方もパターン1に当てはまります。


つまり実務上は、「昭和56年5月31日以前に建てられた家かどうか」をまず確認し、当てはまるのであれば更地にして売るのが基本、と考えておくとわかりやすくなります。


なお、その譲渡において空き家を相続した相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円が上限となります。

相続税を取得費に加算できる特例

相続税を納めた方が、相続した不動産を一定期間内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例です。取得費が増えることで譲渡所得が小さくなり、税負担を抑えられます。


適用できるのは、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合です。相続税の申告期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内のため、目安としては相続開始からおよそ3年10か月が期限となります。

期限を意識してスケジュールを考える

いずれの特例にも期限があり、3,000万円特別控除は「相続開始から3年目の年末まで」が一つの区切りです。売却活動から引き渡しまでには数か月かかることも珍しくなく、相続登記や家財の片づけにも時間を要します。特例の活用を視野に入れるのであれば、期限から逆算してスケジュールを組んでおくと安心です。


なお、これらの特例は要件が細かく、適用の可否は個別の状況によって判断が分かれます。実際に利用する際は、税務署や税理士など専門家への確認をおすすめします。

相続した空き家を売却するときの注意点
相続した空き家を売却するときの注意点

手続きを進めるなかで、つまずきやすいポイントもいくつかあります。事前に把握しておくと、落ち着いて対応できます。

取得費がわからないと税負担が増えることがある

譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費がわかる資料(売買契約書など)が見つからない場合には、売却価格の5%を取得費とみなして計算することになり、結果として譲渡所得が大きくなりがちです。古い契約書や購入時の資料が残っていないか、早い段階で確認しておきましょう。

相続人が複数いる場合は分け方を決めておく

不動産は現金のように簡単に分けられません。空き家を売却して代金を分ける「換価分割」を選ぶ場合には、その内容を遺産分割協議書に明記しておくことが大切です。売却価格の希望や引き渡し時期について認識がずれていると、話し合いが長引き、特例の期限に間に合わなくなることもあります。

家財の整理や境界の確認も早めに

長く空き家になっていた住まいには、家具や仏壇、写真などが残っていることが多くあります。処分には費用も時間もかかるため、売却の方針が固まったら並行して進めておくとスムーズです。また、隣地との境界が不明確な場合には測量が必要になることもあり、こちらも時間を要します。


売却を検討される際は、まず現在の状態で不動産会社に相談し、想定される価格と進め方を把握するところから始めてみてください。


・お問い合わせはこちら

相続した空き家の売却まとめ

相続した空き家は、持ち続けるほど維持費と管理の負担が積み重なり、建物の状態によっては売却の選択肢も狭まっていきます。売却を進めるには、遺産分割協議と相続登記で名義を整えることが最初の一歩です。相続登記は2024年4月から義務化されており、期限にも注意が必要です。


売り方には、現況のまま売る方法、解体して更地にする方法、不動産会社の買取を利用する方法があります。ここで意識しておきたいのが、3,000万円特別控除を使うには、原則として更地にして売るか、買主に解体してもらう必要があるという点です。建物を残したまま売って控除を使えるのは、耐震基準に適合している場合に限られます。昭和56年5月31日以前に建てられた家を相続した場合は、解体費用と控除による軽減効果を見比べながら売り方を決めていくとよいでしょう。特例には期限もあるため、逆算して動くことが大切です。


相続した空き家をどうするかは、ご家族にとって大きな判断です。ひとりで抱え込まず、早めに状況を整理し、必要に応じて専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。


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