カテゴリ:不動産お役立ちコラム / 投稿日付:2026/09/25 16:25

実家を相続することになったとき、多くの方が最初に気にされるのが税金のことです。相続税はかかるのか、住まないまま持ち続けたらどのくらい負担が続くのか、売ったらまた税金がかかるのか。空き家に関わる税金は、相続したとき・持ち続けている間・手放すときと場面ごとに種類が異なるため、全体像が見えづらくなりがちです。この記事では、空き家を相続した際にかかる税金を場面ごとに整理しながら、負担を抑えるために知っておきたい特例や期限についてわかりやすく解説していきます。
空き家の相続でかかる税金は3つの場面に分けて考える

空き家にまつわる税金は、それぞれ課税されるタイミングが違います。まずは全体像をつかんでおくと、どこに注意すべきかが見えてきます。
相続したときにかかる税金
相続の段階でかかるのは、相続税と登録免許税です。相続税は遺産の総額が一定の金額を超えた場合にかかるもので、必ず発生するわけではありません。登録免許税は、不動産の名義を相続人へ変更する相続登記の際に納めるもので、原則として固定資産税評価額の0.4%が目安となります。
なお、相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりません。この点は、購入や贈与で取得した場合との違いです。
持ち続けている間にかかる税金
空き家を所有している間は、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税と都市計画税が課されます。住んでいなくても、使っていなくても課税される点が、空き家の負担が続く理由のひとつです。
売却したときにかかる税金
売却によって利益が出た場合には、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。売却価格そのものに課税されるのではなく、取得費と譲渡費用を差し引いた利益部分が対象です。このほか、契約書に貼る印紙税も必要になります。
相続税は基礎控除を超えた分にかかる

「実家を相続すると相続税がかかる」と考えられがちですが、実際には基礎控除の範囲内で収まるケースも少なくありません。
基礎控除額の考え方
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。たとえば相続人が配偶者と子ども2人の場合は、3,000万円+600万円×3人で4,800万円が基礎控除額です。遺産の総額がこの金額以下であれば、原則として相続税はかかりません。
遺産の総額には、空き家の土地・建物だけでなく、預貯金や有価証券なども含めて計算します。空き家単体で判断するのではなく、財産全体で見ることが大切です。
空き家の評価額はどのように決まるのか
相続税の計算では、土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに評価します。実際の売買価格とは異なる基準で計算されるため、「売ったらいくらか」と「相続税の計算上いくらか」は一致しません。
築年数の経った建物は評価額が低くなる傾向がありますが、土地の評価額は立地によって大きく変わります。おおよその目安を知りたい場合は、固定資産税の課税明細書を手元に用意しておくと話が早く進みます。
小規模宅地等の特例が使えるかを確認する
被相続人が住んでいた土地については、一定の要件を満たすと評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。ただし、この特例は誰が相続しても使えるわけではありません。配偶者や同居していた親族が引き継ぐ場合が基本で、別居していた親族の場合は、いわゆる「家なき子」と呼ばれる条件を満たす必要があります。
空き家として引き継ぐケースでは適用できないこともあるため、相続税がかかりそうな場合には、早めに税理士へ確認しておくと安心です。
保有中にかかる固定資産税と注意したい制度

空き家を持ち続ける場合、毎年の固定資産税が実質的な維持コストになります。ここには、状態によって負担が変わる仕組みがあります。
住宅が建っている土地は軽減されている
住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」が適用され、200平方メートル以下の部分については固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されます。空き家であっても住宅として扱われている間は、この軽減が受けられます。
管理が行き届かないと軽減が外れることがある
2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法では、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という区分が設けられました。窓や屋根の破損、草木の繁茂などにより、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある状態が対象です。
自治体から指導を受け、さらに勧告に至ると住宅用地の特例が外れ、固定資産税の負担が大きく増えます。軽減が外れることで税額が数倍になるケースもあるため、使っていない住まいであっても、最低限の管理は続けておく必要があります。
解体して更地にした場合も軽減は外れる
建物を取り壊して更地にすると、住宅用地の特例が適用されなくなり、翌年からの固定資産税は上がります。解体には費用もかかるため、解体後にどうするか(売却するのか、活用するのか)を決めてから動くほうが結果的に負担を抑えやすくなります。自治体によっては解体費用の補助制度が用意されていることもあるので、空き家の解体で使える補助金について解説した記事もあわせてご確認ください。
売却するときの税金と使える特例

空き家を手放す場合には、売却益に対する税金を確認しておきましょう。ここには負担を大きく減らせる特例があります。
譲渡所得の計算と税率
譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算します。取得費は被相続人が購入したときの金額を引き継ぐため、購入時の売買契約書が残っているかどうかが重要です。資料が見つからない場合は売却価格の5%を取得費とみなして計算することになり、税負担が大きくなりがちです。
税率は所有期間によって変わり、5年を超える長期譲渡所得は20.315%、5年以下の短期譲渡所得は39.63%です。相続した不動産は被相続人が所有していた期間を引き継ぐため、多くのケースでは長期譲渡所得に該当します。
空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡です。前提となる主な要件は次の通りです。
・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続開始の直前に被相続人が住んでおり、ほかに居住していた人がいないこと
・売却代金が1億円以下であること
・相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
・譲渡時に耐震基準を満たしているか、家屋を取り壊していること
注意したいのは、この控除は「建物を残したまま売る」ケースではほとんど使えないという点です。控除が使えるのは、次の3つの売り方に限られます。
・パターン1:売主が建物を解体し、更地にしてから売る
・パターン2:建物付きで売り、買主が譲渡した年の翌年2月15日までに解体する(2024年1月1日以後の譲渡から対象。売買契約書への明記が必要)
・パターン3:建物付きのまま売る(耐震基準に適合している場合のみ)
相続した古い家にあらためて耐震改修の費用をかけるケースは多くないため、実務上は解体して更地にしてから売る形が基本になります。買主に解体してもらう方法もありますが、予定どおり解体されなければ控除が使えなくなるため、解体費用を用意できるのであれば売主側で解体しておくほうが確実です。
なお、昭和56年6月1日以後に建てられた家屋は、解体して更地にしたとしてもこの控除の対象にはなりません。また、その空き家を相続した相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は2,000万円になります。
相続税を取得費に加算できる特例
相続税を納めた方が一定期間内に売却した場合には、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。適用できるのは、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡です。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内のため、目安としては相続開始からおよそ3年10か月が期限となります。
なお、3,000万円特別控除と取得費加算の特例は併用できません。どちらが有利かは状況によって変わるため、事前に試算しておくとよいでしょう。
税金の負担を抑えるために早めにしておきたいこと

空き家の税金には、時間の経過とともに選択肢が狭まるものがあります。判断を先送りにしないことが、結果的に負担の軽減につながります。
相続登記を済ませておく
2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が求められています。正当な理由なく手続きを怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。名義が被相続人のままでは売却もできないため、早めに済ませておきたい手続きです。
期限をカレンダーに書き出しておく
相続税の申告期限は10か月、3,000万円特別控除は相続開始から3年目の年末、取得費加算の特例はおよそ3年10か月と、期限がそれぞれ異なります。売却には数か月かかることも多いため、逆算して動くことが大切です。
判断に迷うときは早めに相談する
住み続けるのか、貸すのか、売るのか。方針によって使える制度も変わります。相続放棄という選択肢を検討される場合は、空き家を相続放棄する前に知っておきたいこともあわせてご覧ください。
空き家の相続と税金まとめ
空き家にかかる税金は、相続時の相続税と登録免許税、保有中の固定資産税・都市計画税、売却時の譲渡所得税と、場面ごとに種類が分かれます。相続税は基礎控除の範囲内で収まることもあり、まずは財産全体で判断することが第一歩です。
保有を続ける場合は、管理が行き届かないことで固定資産税の軽減が外れるリスクがあります。売却を選ぶ場合には、3,000万円特別控除や取得費加算の特例といった制度があり、いずれも期限が定められています。制度を活かすためには、相続登記を含めた手続きを早めに進めておくことが欠かせません。
税金の計算や特例の適用可否は個別の事情によって変わるため、具体的な判断は税務署や税理士へご確認ください。そのうえで、空き家をどうするかという方針を早めに整理しておくことが、負担を抑える一番の近道になります。
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